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インタビュー:茨城大学工学部の教授たちの挑戦
 
 
 
もう一つのテーマである「磁気記録媒体の界面構造解析技術」について教えてください。
 
研究室2   これは、いわゆるハードディスクの記憶容量を増大させるための研究です。目標は1テラビット/平方インチ。現在実用化されているものより、一桁上げるということになります。
  ごく簡単に言うと、ハードディスクの記憶容量は、単位面積あたりの磁力――いかに多くの磁界をつくるかということです。磁界というのはあの磁石のNとSですね。NとSが一組で記録ビットという記録の単位になります。だから、N―Sを単位面積あたりにたくさん配置するほど、記憶容量は高くなります。
 
  ところで、ハードディスクの記録方式には、「面内磁気記録方式」と「垂直磁気記録方式」の2種類があり、前者がディスクの断面で横方向にN―Sが配置されているのに対し、後者は縦方向にN−Sが配置されています。
  前者の方式は、60年代から年々右上がりで記憶密度が上昇してきましたが、2000年前後から限界がみえてきました。それは、高密度にN―Sを配置するほど、N−S間の距離が小さくなり、「反磁界」という磁力を打ち消す力が大きくはたらいてしまうことが原因です。また、薄膜化しなければいけない一方で、そうすると記録が不安定化するという信頼性の問題があるためです。
  一方、垂直磁気記録方式では、高密度化しても反磁界の影響を比較的小さく抑えることができ、さらなる高密化が期待されています。しかし、ここでも記憶密度を上げるために薄膜化するほど、記録の保存状態が不安定になるというってしまうという問題があります。これは「中性子散乱」とよばれる現象です。膜厚を薄くすると膜を構成する結晶構造に乱れが生じ、N−Sの垂直方向が保たれにくくなる結果、記録の保存状態が不安定になってしまうんです。
 
  私の研究室では、薄くても信頼性の高い磁気記録媒体を開発しようとしています。透過電子顕微鏡を使い原子構造を解析し、どういう膜構成にすれば、この中性子散乱が起こりにくいかを研究中です。磁気記録媒体の基板には、従来プラチナやコバルトなどが使われていましたが、プラチナやルテニウムなど新たな素材を使った多層膜を検討しています。
 
日本における電子・情報デバイスの材料研究は、国際的にどう評価されていますか。
 
  世界の半導体メーカーのトップランキングには、ベスト10に日本の企業が3社入っています。しかし、80年代、日本がこの分野で世界の最先端を行っていたことを思うと残念に思いますね。近年、台湾や韓国では、国をあげての半導体開発が行われている一方、人件費の安さを強みに、世界を席巻するほどの勢いです。
  こういう状況下において、日本のメーカーが単独で開発を推進するのはますます難しくなっているのではないでしょうか。国として材料研究などにもっと力を入れるべきだと思いますね。高性能で高速の半導体の開発は、ビジネス的にも必ずや成功すると思います。
 
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